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会社売却後の金融機関借入の保証債務はどうなるのか?

会社が銀行から借り入れをしている場合、代表者が連帯保証人として保証債務を負っているケースが多いと思います。

ご承知のとおり、仮に会社が返せなくなった時は個人に請求がくるということですので、これは代表者個人が間接的に借入を起こしていることと同義です。

この「借入金の保証債務」は、株式を譲渡した後はどうなるのか?

というご質問が多く寄せられますので、その点について書いていこうと思います。

100%保証債務が外れるとは言い切れない

結論をお伝えすると、

『代表者保証は無くなる確率は高いが100%絶対無くなるとは言い切れない

です。

「なぜ100%無くなると言い切れないのか?」

それは、買い手が決めるわけではなく、借入の債権者である銀行が決めることだからです。

銀行側の言い分を考えてみたいと思います。

貸付にはなんらかの担保があります。

土地や建物に抵当権を付けていたり、預金や売掛金を担保にしていたりすることが一般的です。

良く見落とされがちですが、代表者個人の保証人も立派な担保です。

これらの担保が無い貸付ももちろん存在します。

上場企業等はその典型です。

一見なにも担保にされていないように見える貸付も、事業そのものを担保に貸付を行っているという考え方もできます。

 

つまり、それらの担保があるから貸付をしたのであり、その前提となる担保(今回のテーマは保証人)を外すということはできない、外すのであれば一旦ご返済いただきたい、というのが銀行側の言い分として考えられます。

特に信用保証協会付きの融資は厄介で、信用保証協会が『保証人だけを外す』ことを認めていただけなかったというケースも過去に存在しました。

代表者保証を外すことが難しいケースとは?

一口に代表者保証を外すと言っても、M&Aにはいろいろな取組パターンがあります。

 ➢代表取締役を退任する
  ・取締役として継続
  ・顧問として継続
  ・引継ぎ後、完全に会社から離れる

 ➢代表取締役を継続する

 

この中で、一番代表者保証が外れにくいパターンはどれか?と言えば

「代表取締役を継続するパターン」

だと思われます。

 

なぜなら、先ほど挙げた債権者側の言い分に一番当てはまってしまうためです。

これまでどおり代表を続けるのであれば、代表者保証はそのままで良いのではないか?ということです。

ただ、本質的な考え方として、買い手(新株主)が大きな資本力のある会社で当然保証人は取っていないのにも関わらず、子会社の代表者をなぜ保証人に取るのか?というものがあります。

これはおっしゃる通りだと考えます。

 

しかし、過去の事例では、融資(というより銀行固有)のルール上できないというものでした。

この時は地域が問題になりました。

売り手の会社は関東、買い手は九州で、九州に支店がない地方銀行が融資をしているといったケースです。

そこは本質に合わせて融通を利かせるべきところだと思いますが、銀行としての管理の観点からできないことに文句を言っても始まりません。

それでは具体的に外す術はないのか?

というとそうでもありません。

代表者保証を外す方法

結局、保証債務を外すにはどうしたら良いのか?

方法としてはとてもシンプルです。

ようは全て返済すれば、担保は外すことができます。

「それができないから借りているんだ」

そう思うかもしれません。

ただ、せっかくM&Aをしたのであれば、買い手の資本力を活用しましょう。

そうです。

買い手から借入(親会社ローン)を行い、そのお金で全て返済することで担保を外すという方法です。

 

買い手から見てもメリットはあります。

正直、グループ内の会社がそれぞれ異なる銀行とやり取りを行い、全てを親会社が管理することはとても煩雑です。

また、一元化というメリットに加えて、調達コストが下がる(直接的なメリットは売り手が受けるが、買い手にとってはグループ全体でみたときに)というメリットがあります。

 

売却対象会社にとってはまた別のメリットがあります。

銀行とのやり取りは正直本業の活動ではありません。
(だから営業外損失に支払利息が計上されているわけです。)

資金調達面の問題を親会社ローンによって解決することで、より一層本業にリソースを集中させることができます。

なお、親会社となる買い手が全て上記のような対応ができるとは限りませんのでその点はご注意下さい。

 

親会社ローンを期待できないときは担保を外せないのか?

というとまたそうでもありません。

買い手側の銀行が借り換えをしてくれる可能性もあります。

その際、借り換えのときに担保無しで調達するということです。

 

また、保証人を代表者である売り手から買い手企業に変えるという手段もあり得ます。

そもそも、代表者として残るとはいえM&Aを実施したことで、会社の実質的なコントロール権は無いことは明白です。

その点をご理解いただくことで、変更に応じていただける可能性もあります。

とにかく諦めるのではなく、M&A実行後に粛々と代表者変更については買い手と共同で銀行側とやり取りをすることが肝要です。

この記事のまとめ

以下のポイントだけ抑えておけば問題無いと思います。

 ・代表者は保証人から外せない可能性がある。
 ・連帯保証を外すために買い手候補先は親会社ローンや新たな保証人となってもらえるかを事前に確認しておく。
 ・保証人を外す方法はいくつかあるので、一つずつ試していく。

 

この記事がご参考になりましたら幸いです。今回もお読みいただきありがとうございました。