今回は、”会社を売却する時”に事前にある程度決めておかないと、後々苦労する条件について書いていきたいと思います。
【決め手おくべき条件】
☞売却金額
☞役員退職金を絡めるかどうか
☞譲渡後も関与する期間・内容・報酬
☞個人資産の会社からの分離
☞家族従業員の今後
1.売却金額
これは言うまでもありません。
買い手候補先も必ず
「売り手の希望額は大体いくらくらいでしょうか?」
と聞いてきます。
買い手の希望取得額とあまりにもかけ離れた金額ではそもそも検討する意味が無いためです。
そのため、レンジ(●億円~●億円等)でも良いので、腹積もりは予め決めておく必要があります。
※腹積もりを決めるための、そもそもの価格の目安は「企業評価」をM&A会社に行っていただくことで知ることが可能です。
2.役員退職金を絡めるかどうか
M&Aを進めていくと、買い手候補先から価格やその他の条件提示が出てきます。
「株式価値:3億円」
といったようにです。
ここで、役員退職金を絡めることもしばしば行われます。
誤解されがちな点ですので、良くご確認いただきたいのですが、
役員退職金を仮に5千万支給する場合は、
株式譲渡の価格は3億円ではなく【2.5億円】になるということです。
理由は以下のような考え方があるからです。
退職金を支払う ⇒ 会社から現預金が減る ⇒ 純資産が減る ⇒ 株式価値が減る
言い換えると、予め退職金が5千万円支給されることを知らない状態での【株式価値】を提示していたからです。
会社の現預金が減ってしまっては、通常事業の運転資金がショートしてしまう恐れもありますので、お相手からの承諾も得た上で進める必要があります。
交渉が進んでからお伝えするのでは支障が出ることがありますので、事前に退職金を絡めるかどうかはお伝えしておく必要があります。
3.譲渡後も関与する期間・内容・報酬
この点も買い手候補先は必ず気になる点です。
代表取締役として引き続き残る場合には問題になりませんが、譲渡後に会社から離れる場合にはこの点が非常に重要になります。
買い手にとってみれば、買収が終わってからが始まりです。
買収後に大きく業績を伸ばしたいと考えていますが、そもそもその前にスムーズにこれまでどおり事業が回ることが大前提にあります。
つまり買い手にとっては
譲渡後、どの程度まで関与していただけるのか?
が重要になるということです。
これはオーナー様個人の事情も加味した上で、以下の項目について大枠だけでも考えておくべきです。
・週に何日、1日何時間の関与が可能なのか?
・最大1年間なのか、2年間なのか?
・関与する内容はあくまで「引き継ぎ」だけなのか、「人材教育」という業務に関与することが可能なのか?
また、関与する期間や内容が決まると、自然に報酬のイメージも湧いてくるはずです。
上記の内容を踏まえた報酬額をイメージされれば良いのですが、あまりに高い報酬を求めると、株式価値にも影響してくる話になりますので、バランスを考慮することが重要です。
むしろ、ここの報酬はほぼ無いものとして、希望の売却金額をイメージされた方が良いと思います。
4.個人資産の会社からの分離
ここは以前の記事で取り上げましたので簡潔に触れたいと思います。
買い手がなぜ買収をするか?
端的に言えばその事業が魅力的だからです。
つまり、会社が所有する「事業と無関係の個人的な資産」は買収後の事業運営において不要になるということです。
大手である場合には、まず間違いなく何らかの方法で会社から切り離してもらいたいという要望が出ます。
そのため、何を会社から切り離すかを事前に決めておき、買い手へ打診するタイミングでは明確にその資産の取扱いを提示するべきです。
株式の売却金額へ影響がある点ですので、必須で考えるべき事項です。
5.家族従業員の今後
中小企業では、オーナーの奥様やご子息やご両親が働いていたりするケースがございます。
売却後は、買い手候補先から新たに役員が派遣されたり、経理部門の業務の一部は統合を図ったりするケースも見られます。
ご家族のご事情によっては”残って働く必要(事情)がある“場合もあるはずです。
買い手候補先では買収後の人員体制について事前に良く検討しておく必要がありますので、ご家族にこれまでどおり働いていただきたい場合には、事前に条件の一つとして伝えておくべきです。
基本的な条件で合意した後に伝えると、条件の見直しとなってしまい、最悪の場合、前提条件が違うということで買い手が降りてしまうリスクもあります。
その他のポイントと合わせてよくご検討下さい。
今回の記事がお役に立てたら嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。